先日のニュースで、中学校教員が殺人事件に関与していると報道されましたね。
その中で、FXでの借金があったと一部報道であり、SNS等ではFXはギャンブルだろうという意見が見受けられました。今回の記事では、元公務員としてFXがギャンブルなのかを物理学、経済学、心理学から考察し、公務員や会社員のFX取引の構造的な問題を明らかにします。
ギャンブルとは
まずはギャンブルとは何かを定義します。
賭け事。ばくち。また、偶然や運に頼る危険な試み。「公営ギャンブル」「結婚はギャンブルだ」
デジタル大辞泉より
また、大阪府(大阪府こころの健康総合センター)の見解では、ギャンブルとは「結果が偶然に左右されるゲームや競技等に対して、金銭等をかける行為のこと」となっています。(ちなみに、ギャンブルの一種としてFXも含められています。)
他にもギャンブルの定義は多種多様ありましたが、当記事では、ギャンブルを「結果が完全には予測できない(運)偶然に左右される危険性を伴った行為または遊興」と定義します。
為替レートの予測とランダムウォーク理論について
ランダムウォーク理論とは
現在の技術(AI等)を持ってしても、為替レートや株価の完全な予測は不可能だと一般的には言われています。その代表的な論説の根拠として挙げらるのがランダムウォーク理論と呼ばれるものです。
そもそも、ランダムウォーク理論は、統計学や物理学の分野で用いられる確率過程の一つであり、ランダムに選ばれた方向に移動する粒子や物体の運動をモデル化する際に用いられています。
ランダムウォークの特徴は、その移動が完全にランダムであることです。すなわち、現在の位置から次に移動する方向や距離は、前の移動や現在の位置には依存しないということです。
このランダムウォークを金融市場における株価変動や通貨の変動などの分野に応用すると、ランダムウォークモデルは、市場参加者が情報を十分に反映させている場合において、株価変動や為替変動はランダムであると仮定しています。
しかし、市場が効率的であるという仮定は、現実には常に成立しているわけではありません。まず、市場参加プレイヤー間の情報量や情報を得るスピードに差が存在することは事実です。さらに、情報を何も持たず、参加するプレイヤーも一定いますし、何よりも勝ち組と負け組が存在していることが、市場がランダムではない場合があることの証拠の一つでしょう。
ランダムではないが、予測できるかどうかは別問題
ランダムウォーク理論にも一定の論拠はあるとは思いますが、全ての場面、時間、市場において通用するという意見に対してはNOと言えます。
ただし、ランダムウォークが成立していない場面をどのように定義するのか、また、ランダムではない場面で完全な予測ができるかどうかは不明です。今後の技術の進歩次第と言えるでしょうが、現時点では為替レートを完全に予測することは不可能としておきます。
FXの危険性について
レバレッジコントロールは難易度が高い
FX(もしくは先物取引や信用取引)が危険だとされる、最大の理由はレバレッジでしょう。(レバレッジに関しては以下の記事に詳しく書いています。)
レバレッジ自体、コントロールできれば、資金効率を上げられるというメリットがありますが、コントロールできずに、過度なレバレッジをかけてしまう人が、初心者に特に多いことは紛れもない事実です。なぜならば、レバレッジコントロールは人間の本能に抗うことに他ならないからです。
ロット計算ができないのは致命的
ここで一旦、話を変えて、ロット計算について説明します。FX取引ではロットという単位を用います。国内FX会社であれば、最小単位1ロット=1万通貨が一般的でしょう。ドル円のレートを1ドル135円と仮定すると、1ロットの取引で、135円×10,000=135万円が必要になります。
ここでレバレッジが25倍の環境であれば、10万円の資金で250万円分の取引が可能になるので、低資金からでも大きく増やすことができるというのがFXの売り文句となっています。
では、本当に大きく勝つことができるのでしょうか。仮にドル円のレートが135円から136円まで上がったと仮定しましょう。10万円の資金でドル円1ロット(1ドル135円)を買っていたとします。(135万円分ドルを持っている状態になる)136円に上がった場合、136万円ー135万円で1万円の利益が出ます。元で資金の10%が増えるというのは、非常に大きな利益です。
一方で、同じ額だけ反対に行くとどうなるでしょうか。1ドルが134円になればマイナス1万円となります。最小単位の1ロットだからと油断していると、あっという間に元手の10%を失うことになります。
ロット計算ができないということは、自分がいくら動かしているのか、レバレッジをいくらかけているのかを理解せずに取引しているのと同じです。大きく勝つ可能性も大きく負ける可能性もあります。
過度なレバレッジをなぜかけるのか。
話を戻します。FXで100戦100勝というのは現実ではありえません。為替の完全予測が不可能である以上、損失を出す場合も当然あるからです。
仮に連続で利益が出ている場合があるとします、ただし、どこで損失になるかは不明です。よく言われる勝ち逃げをすればいいのですが、人間の脳はギャンブルでの勝利やFXの利確などで、ドーパミンと呼ばれる快楽物質を出します。この快感が忘れられずに、負けが来るまでやってしまうのです。
さらに、大きく負けた場合はどうでしょうか?ギャンブルをする人ならあるあるかもしれませんが、通常は負けを取り返そうとします。負けを取り返す方法は、同じ分もしくはそれ以上に勝つしかありません。しかし、負けたことによって資金は減っています。つまり相対的にレバレッジが前回よりも上がっている状態での勝負になります。すると、負けが連続するその度に、取り返すのが難しくなっていくということになり、過度のレバレッジをかける要因になっていきます。
FXにおけるプロスペクト理論
上の記事にも書きましたが、プロスペクト理論と呼ばれる人間の本能的な損失回避行動もFXでは大敵になります。いわゆる、利益を早く確定し、損失は確定させずに持っておく行為はこのプロスペクト理論に当てはめれば容易に説明可能です。
では、レバレッジが高い状態で、損失を確定させずに持っておくとどうなるでしょうか。結論はロスカットです。つまり強制的にポジションを決済されマイナスが確定します。
部分強化により取引を続ける、さらに入金地獄へ
サルの実験は聞いたことがある方もいると思います。サルがボタンを押すと必ずバナナが出てくる仕掛けを作り、ボタンを押す→バナナが得られるという印象づけを行います。最初のうちはボタンに興味を示していたサルですが、次第に興味を失います。(これを連続強化といます)
次に、バナナが出る時と出ない時があるように設定をすると(部分強化といいます)、サルは1日中ボタンを押すそうです。つまり、連続強化よりも部分強化の方が、依存率が高くなるということを示しています。これを最大限に生かしたのがギャンブルと言われていますが、同じようにFX取引にも当てはまるのではないでしょうか。
では、FXはギャンブルなのか
ここでギャンブルの定義を再度、思い出してください。
「結果が完全には予測できない(運)偶然に左右される危険性を伴った行為または遊興」
これまでの流れからすると、FX取引は完全にギャンブルに当てはまっているように感じます。ただし、危険性を伴うという部分には注意が必要です。
適切なリスクコントロールをすれば、資産増加の選択肢として考えられる
危険性をコントロールし、FXをギャンブルではないと考える場合において、コントロールできるものに注力する必要があります。それは「資金管理」です。
いくらの資金を投入して、いくらのレバレッジをかけるのかは全てコントロールすることができます。先ほども言いましたが、コントロールすることは至難の技です。しかしながら、人間の本能を乗り越えて、コントロールすることができれば有用な資産増加の選択肢に入ることも事実です。
公務員のお財布事情とFXの罠
安定しており、借金もしやすい
上の記事を参考にさせてもらうと、公務員のお財布事情は「安定的に平均的な給与が毎月支払われ、借金もしやすい」と判断できます。
安定的な収入が入金地獄への始まり、借金で人生にレバレッジ
安定的な収入が確保されているということは、仮に負けが続いたとしても、入金すればある一定まではカバーできるということです。資金が尽きれば、さらに入金、入金、、、、といつかは利益が出るだろうという考えに陥ります。
収入からの入金が尽きてしまった場合、最終手段としては借金があります。公務員ですから何らかの名目でお金を借りることは容易でしょう。しかし、借金をすることは考え方次第では、自分の収入にレバレッジをかけているようなものですから、一歩間違えれば、首が回らなくなります。
今回の中学校教員の殺人容疑も、報道の情報から考えると、公務員という立場であることが過度な借金に繋がったと見ることもできるのではないでしょうか。
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